posted: 2020/12/12
update: 2020/12/12
2020年12月11日、フランスのルメール経済財務復興大臣とドイツのアルトマイヤー連邦経済・エネルギー大臣は、両政府は欧州のロケット産業を全力で支援していくという共同文書を発表した。
これは前日の12月10日に両大臣がベルリンで宇宙政策について話し合った結果を受けてのことである。文書は以下のようになる。(抜粋)
両大臣は宇宙産業は欧州の競争力にとって大変重要で、戦略的な力のために不可欠なものだということを共通認識した。そして欧州の自立的な宇宙へのアクセス(他に頼らないで宇宙機等を打ち上げられること)を継続、強化していかなければいけない点で意見が一致した。
そのため、フランスとドイツは、アリアン6プロジェクトを成功させること、そのために産業側も効率性とさらなる競争力をもっていくことを決意した。
加えて、小型(マイクロ)ロケットについて将来の開発と民間企業側の取り組みは極めて重要であること、この分野での欧州内の協力は市場原理で動いていくべきであること、フランスとドイツはこの分野の協力を推進していくことが話された。
また両大臣は欧州宇宙産業は高いレベルのイノヴェーションをし続けていけない点でも合意した。これには公的支援やコミットに加え民間企業の宇宙事業への投資が必要ということである。
そして両大臣は競争力強化、市場原理による事業の実現、将来の欧州ロケットを準備する上での優先事項を鑑みた効率性のためにどうしていったら良いかを特定するハイレベル作業部会を発足させることにした。
さらに作業部会は宇宙政策で欧州共通の立場を取れるようになるために貢献しなければならない。これは規制枠組みを作る過程での欧州の優位を保ち、拡張させていくためである。作業部会は調査分析に基づいた政策的進言書を2021年半ばまでに提出する。
この共同文書についてルメール仏経済大臣は「15年間で初めてフランスとドイツが欧州ロケットの将来について共同作業をする約束をした。これにより欧州の宇宙産業は、世界の宇宙産業のリーダーの中で欧州連合の旗を掲げ続けるための効率性と競争力を勝ち取ることができるだろう」と話している。
2020年11月25日、ルメール仏経済大臣はイタリアのフラカーロ伊内閣政務次官と会談し、同じ趣旨の共同宣言を発表している。そこでも上記作業部会についての言及があり、イタリア、ドイツ、フランスが参加する作業部会を発足させるとしている。今回のドイツとの共同文書にはイタリアの文字はなかったが、イタリア陣も参加することは当然の帰結であろう。
(フラスペ ニュース 2020年11月28日付「イタリアとフランス政府、ヴェガ、アリアンを全力サポートの共同宣言」https://www.france-space.com/news/post-44.html 参照)
ソース:仏ヨーロッパ・外務省(11/12/2020)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20201212-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。