posted: 2019/09/04
update: 2019/09/04
2019年9月3日、欧州宇宙機関(ESA)は自身の地球観測衛星アイオロス(Aeolus)とスペースX社のStarlink44衛星との衝突を回避するため、9月2日にアイオロスの軌道変更オペレーションを行ったと伝えた。
アイオロスは地球規模で地球の風を観測する衛星で、高度320km、傾斜角97度の太陽同期軌道を回帰日数7日で周回している。打上げは2018年8月で運用予定年数は3年間。
一方Starlink 44はスペースX社が構築中のスターリンク大規模衛星システム(メガ・コンステレーション)の1つのミニ衛星である。スターリンク・システムは合計1万機以上の衛星を用いて高速ブロードバンド通信サービスを提供しようという試みで進められている。
約1週間前(2019年8月最終週)、常時軌道上の物体をモニターしその情報を提供している米空軍の部署(18 SPCS)のデータは9月2日にこの2つの衛星が衝突する可能性があることを示していた。その後ESAの宇宙デブリ担当部署は細かな計算・分析を続けたがその可能性は増す結果となった。そしてアイオロスの高度を約350m上昇させるオペレーションの準備も始められた。
ESAのデブリ課によると8月29日時点で衝突の可能性は1万分の1以上であったが、9月1日にはその可能性は1000分の1にまで上昇していた。そのため衝突回避のためのアイオロス高度変更が決断され、9月2日、ESAの欧州宇宙オペレーション・センター(ESOC:ダルムシュタット、独)から衛星にコマンドが送られオペレーションが実行された。
ESAの宇宙安全部門の責任者は、この件は宇宙での衛星の運行・通信に関する共通のルールがない状況を表していると指摘し、また衝突回避の際も運用者同士でメールをやり取りしながら対応するなどの方法で対処しているため、今後ますます増える衛星数を鑑みるとこのやり方では対応できないとしている。また、ESAは自動的な危険予測や危険を減らす取り組みの必要性を訴えているとのこと。
ソース:ESA(03/09/2019)、 Les Echos, Le Figaro、l'Usine nouvelle、他(03/09/2019)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20190904-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。