posted: 2019/07/22
update: 2019/07/22
2019年7月18日、欧州GNSS機関(GSA)は初期サービスの信号が不通となっていた欧州版GPSのガリレオ・システムが復旧したと発表した。ガリレオの同サービスは2019年7月11日にサービスの低下が起こり翌12日からは通信不能となっていた。(フラスペではこの3つ前のニュース「ガリレオ信号、不通に:2019年7月16日」参照)
GSAによると不具合の原因はナヴィゲーション信号を作成するための時間計算、軌道予測に影響をもたらす地上局の機器にあったという。GSA、メーカなど産業側、欧州宇宙機関(ESA)、欧州委員会(EC)の専門家らが集結し昼夜・週末を問わず原因究明に取り組み、リカバリーまでもっていったとのこと。
また、18日、19日の文章はともに、これから独立調査委員会を発足させ、問題の根本を探りその結果を今後の運営に反映させるつもりであるとも話している。
またGSA長官は7月19日に自らの名で復旧を告げる内容のアナウンスをしている。
この件についてフランスの経済・金融紙ラ・トリビューンは自社の見解も含めた記事を掲載している。まとめると
・この復旧はEU/ECに属する機関であるGSAが頑張ったおかげである。GSAこそがEC域内市場・産業・起業・中小企業担当(EC DG GROW)のビェンコフスカ委員の支援のもと成し遂げたものである。
・復旧後にわかったことだが、原因はESAがガリレオ管制センター(GCC:ドイツのオーバープファッフェンホーフェン、イタリアのフチーノの2ヶ所)に導入した新しいソフトに因るもので、それが運用中のシステム、特に同期化の部分に影響した。
・GSAとSpaceopal社は迅速にGCCのシステムを再設定することになる、つまりESAが怪しいと睨んでいた同期アンテナの不具合の可能性は打ち消された。Spaceopal社は独伊共同企業で、ドイツ航空宇宙センター(DLR)、テレスパッツィオ社、タレス・アレニア・スペース社(TAS)が共同出資している。
・問題の根本を追求するための調査委員会の結成で本当の理由がわかり、誤った情報を払拭することができるであろう。ESAは同期アンテナを提供したTASなどをスケープゴートにし自分を正当化しようとしているように見えるが、アンテナは既に原因から外されている。
フラスペとしては、このラ・トリビューンの論調にどのくらいのバイアスがかかっているのかはわからないので、やはりニュートラルな情報は今後結成されるであろう調査委員会の発表を待ちたいと思う。
ソース:GSA(18、19/07/2019)、ラ・トリビューン(19/07/2019)、シアンス&アヴニール(18/07/2019)、他
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20190722-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。