posted: 2019/07/15
update: 2019/07/16
2019年7月10日(仏領ギアナのクールー現地時間)、欧州の小型ロケットヴェガが打上げ失敗を記録した。2012年の運用開始以来14回の打上げに成功してきたが15回目となる今回が初の失敗となった。
打上げミッションの概要は以下のようになる。
フライト番号:VV15(ヴェガの15番目のフライトの意)
場所:ギアナ宇宙センター(CSG)ベガ打上げ施設(SLV)
時間:2019年7月10日22時53分(クールー現地時間)→パリ時間11日午前3時53分、日本時間11日午前10時53分
顧客:アラブ首長国連邦(UAE)国防省
衛星:FalconEye 1 (光学リモートセンシング衛星、打上げ前重量約1.2t、目標軌道:太陽同期軌道SSO)
・FalconEyeシステムはFalconEye 1とFalconEye 2で運用される予定。FalconEye 2の打上げもアリアンスペース社によって2019年のうちに行われる予定である/あった→今後の動きによる。
衛星製造:エアバスDS社、タレス・アレニア・スペース社(TAS)
打上げオペレータ:アリアンスペース社
ヴェガ製造プライム・コントラクタ:アヴィオ社
・当初の打上げ予定日:2019年7月5日、しかし上空の強風のため2度延期されている。
・打上げ2分後、第2段のゼフィーロ23に点火後、軌道離脱、上昇力低下の異常が認められ、その後目的未達成でのミッション終了の判断がなされる。
・ロケットは住民および物体保護を鑑みた規定にのっとって海に落下
これについての関係者の発表、動きは(抜粋)
アリアンスペース社:打上げ失敗によるペイロードの喪失について、アリアンスペースの名の下に深く陳謝すると謝罪。
欧州宇宙機関(ESA):事故調査委員会を速やかに発足させると発表。
ルガル仏宇宙研究センター(CNES)総裁:打上げに14回連続で成功してきたヴェガであるから、この失敗は予想だにしていなかった。この打上げ失敗は、再度我々に我々がいかに失敗と隣り合わせの難しい事業を行なっているかを思い出させる。
アヴィオ社ランゾCEO:ESA、アリアンスペース社、CNESとともにアヴィオ社も調査委員会に参加する。原因については調査が全て済んでから速やかに報告する。打上げ失敗は複雑なロケットミッションでの不幸な要素の1つ。無念さを共有するとともに謝罪し、顧客、出資者第一を考えている。
この失敗の原因、原因究明については
・11日には既にESA監査官長、アリアンスペース社技術・品質担当上級副社長を共同委員長に事故調査委員会が召集されたことが発表されている。
・現地メディアでは「まだ事故原因について著わすのは時期尚早」が主流論調となっている。
これによるスケジュール変更に影響が出そうだと報じられているものは
・2019年9月初旬に予定されているヴェガロケットでの、ESAの小型衛星ミッションサービス(SSMS)
・2019年終盤に予定されているヴェガロケットでの、今回のペイロードとペアになるEAUのFalconEye 2
・2020年前半に予定されているヴェガのアップグレード版ヴェガCの初フライト:ヴェガCの第2段にはヴェガに利用されているぜフィーロ23でなくゼフィーロ40が搭載されるが、基本技術は変わらずパワーアップさせたものなので事故原因の調査結果によりゼフィーロ40およびヴェガCも見直しとなる可能性もあると報じるメディアもある。
ソース:アリアンスペース社、AFP、他(11/07/2019)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20190715-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。