posted: 2020/10/17
update: 2020/10/17
2020年10月13日、仏軍事省はパルリ軍事大臣がブラックホールの研究で2020年ノーベル物理学賞を受賞した3人の業績とその業績への仏国立航空宇宙研究所(ONERA-The French Aerospace Lab)の貢献を賞賛したと伝えている。
ONERAは1946年に設立された航空・宇宙・防衛分野の研究所でその主管は仏軍事省となっている。仏語のOffice National d'Études et de Recherches Aérospatialesという名称が国際的にわかりづらいため2007年からはThe French Aerospace Labという英語の呼称もつけられている。
同大臣はONERAの補償光学のチームに言及し、特にそのチームがパリ天文台、グルノーブル天文台と協力して欧州南天天文台(ESO)に提供したNAOS機器(ナスミス補償光学機器)がこのノーベル賞の受賞に貢献したとして讃えている。ESOはチリにある国際天文観測施設である。
賞賛の文章では、ONERAが欧州の先がけとなって開発してきた補償光学技術を利用した機器はESOの超大型望遠鏡(VLT)にも使われており、VLTでの観測が銀河の中心の大変大きな天体の観測にとって決定的な役割を果たしたと書かれている。
ONERAは軍用に補償光学技術に取り組んできたが、この技術は今では天文学、医学、光学衛星通信、衛星監視など様々な分野で用いられている。天文学への利用は1980年代に始まったが、その後ONERAはこの技術の発展努力を続けている。そして現在チリのアタカマでは2026年を目指して直径39mの大型の欧州望遠鏡建設プロジェクトが進められている。
ソース:仏軍事省(13/10/2020)、ONERA(14/10/2020)、3AF(Edito lettre N°19 16/06/2016)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20201017-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。