posted: 2020/12/15
update: 2020/12/15
2020年12月10日、仏航空宇宙工業会(GIFAS)の宇宙委員会は仏国立宇宙研究センター(CNES)のルガル総裁に対し、フランスや欧州の宇宙産業分野のためのCNESの戦略的方向性を質問するためのヒアリングをおこなった。
その機会にルガルCNES総裁は以下の点を話した。(CNESのプレスリリース要約)
仏政府の復興予算における宇宙分野の予算配分のオペレータ
仏政府の復興予算(コロナの打撃からの復興のため2020年9月3日に発表された計画とその予算)は研究、イノヴェーション、大変重要な専門能力の維持、宇宙企業の競争力のための刺激剤となるものである。そこでCNESは仏経済・財務・復興省企業総局(DGE)、仏軍事省装備総局(DGA)仏国民教育・青少年・スポーツ省研究・イノヴェーション総局(DGRI) の担当する宇宙分野の予算を企業に配分するオペレータの役をしっかりやっている。
CNESの中期優先項目について
CNESの中期優先項目については概ね研究・高等教育評価高等会議 (Hcéres)の監査レポートをもとに話されたが、その中でもCNESと産業側の戦略的な話し合いは継続的に開かれ充実した結果を出していることと、その意味でも政府、CNES、産業の協調と戦略的な会話のための宇宙分野産官協調会議(COSPACE)は重要な会議であることが強調された。
また、「経済成長のベクトルである宇宙」、「戦略的な自立」、「持続可能な開発」、という3つの言葉でフランスの宇宙政策のためのCNESの今後の活動が表現された。
国際関係
国際関係では、欧州の宇宙政策の現在の進み具合と欧州連合(EU)の枠組み研究計画Horizon Europeの説明の後、宇宙交通管理(STM)と宇宙デブリ問題についての言及があった。この問題についてフランスは先んじており、2008年に宇宙オペレーション法(仏国内法)が制定されている。しかしこの問題は世界の企業も含めた関係機関・組織が同じ方向に進んでいかないと成果が出ないと話された。
欧州8ヵ国が参加しているEUの宇宙監視・追跡プログラム(EU SST)のほか、CNESは国連宇宙空間平和利用委員会(UN-COPUOS)の宇宙活動の長期持続可能性ガイドラインの最新版(LTS 2.0)を支持している。また宇宙交通協調(STC)が運用レベルになるようアメリカとのより良い調整を目指している。
バイデン米大統領によるアメリカのパリ協定復帰の意向
バイデン新大統領(来年から)は、2015年の気候変動のためのパリ協定にアメリカを復帰させたいと考えているとのことで、大変良いことだ。これによりCNESがワン・プラネット・サミットの一環で発足させた宇宙気候観測機関(SCO:Space Climate Observatory)における地球観測の宇宙プログラムに良い結果をもたらすこととなろう。
ソース:CNES(10/12/2020)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20201214-02
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。