posted: 2020/12/10
update: 2020/12/10
2020年12月9日、欧州宇宙機関(ESA)とイタリアのタレス・アレニア・スペース社(TAS)、アヴィオ社は欧州の再使用型往還機スペース・ライダー(Space Rider)プログラムに関する契約に署名した。
この契約によりTASイタリアとアヴィオは共同受注者としてスペース・ライダーの初号機を開発製造する。これには再突入モジュール、軌道上サービスモジュールのAVUM+(高度・ヴァーニャ上部モジュール・プラス:Attitude and Vernier Upper Module +)の開発製造も含まれている。契約金額は1億6700万ユーロとのこと。
スペース・ライダー・プログラムは2019年11月のESA閣僚級理事会でESAプログラムとしてやるかやらないかが採決された。結果はプログラム参加国(予算拠出国)は10ヵ国、その合計拠出額は見積りよりも多い形で承認された。それからサプライヤ側との交渉を経てこの契約署名に至った。
スペース・ライダーは低軌道対象の小型往還機で、およそミニバン2台ほどの大きさである。ペイロード用の部分は800kgまで搭載可能な仕様となっている。ギアナ宇宙センター(CSG)からヴェガCロケットで打ち上げられ、軌道サービスモジュールのAVUM+は、軌道上では航行支援をし、再突入の際は再突入部分を切り離した後大気圏突入での燃焼に至る。
帰還機の着陸地は、優先順位1つ目がCSGで、その次にポルトガルのアゾレス諸島のサンタ・マリア島が考えられている。
CSGからの初号機打上げは2023年の第3四半期を目指しており、搭載ペイロードは早くも2021年の1〜3月のうちに行われるとのこと。初号機ミッションには再使用要件は含まれていないが、スペース・ライダーは将来的に再使用できる仕様を目指して作られる。
この契約を受注したTASイタリア、アヴィオが率いるチームは、ESAの再突入実験機プログラムIXV(2015年実験)を産業側で主導した経験もあり、その専門能力が生かされることが期待されている。
同日、スペース・ライダーについて、地上セグメントについても契約発注がなされた。地上セグメントはどちらもイタリアのテレスパッツィオ社、アルテック社が請け負う。
ソース:ESA、TAS、Avio(09/12/2020)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20201210-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。