posted: 2020/08/31
update: 2020/08/31
2020年8月28日付けのフランスの技術・科学専門サイトのテクニーク・ドゥ・ランジェニウールで、仏国立宇宙研究センター(CNES)の推進部門シニア・エクスパートであるクリストフ・ボノム氏が再使用型ロケットへの移行の状況や、欧州で研究開発が進められているプロメテウス(Prometheus)エンジンについて同サイト側の質問に答え、解説している。
インタビューの中でボノム氏は、ロケット打上げ業界での再使用型ロケットの開発・今後について、世界の動向や特にスペースXの進捗などの例を出し、おそらく将来は再使用型が一般的になっているであろうと話している。
Prometheus(Precursor Reusable Oxygen METHan cost Effective Engine - 酸素・メタン・コスト効果先駆的再使用エンジン:仏語でのプロメテウスProméthéeに合わせてプロジェクト名が付けられた)エンジンは、そのプロジェクト名の通り液体酸素と液体メタンを推進剤に利用し、コストはアリアン5、アリアン6に使われているヴァルカン・エンジンの10分の1まで下げられるよう設計されている。
同プロジェクトは2015年11月にCNESとエアバス・サフラン・ロンチャーズ社(ASL:現アリアングループ社)の協力で開始された。そして2016年12月のESA閣僚級会議により欧州化が承認され、約8000万ユーロのESA予算が投入されるESAオプション・プログラムとなった。参加しているのはフランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、ベルギー、スイス。
このプログラムは実証を目指しているが、その成果からできたエンジンは2030年あたりから欧州ロケットに搭載していくシナリオが考えられている。現在、実物大のエンジンが完成し、まもなく燃焼試験が行われる予定だという。
ソース:Technique de l'Ingénieur(28/08/2020)、CNES(01/07/2020)、ASL:現アリアングループ社(22/06/2017)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20200831-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。