posted: 2020/09/21
update: 2020/09/21
2020年9月15日付けで仏国立宇宙研究所(CNES)は2030年以降をを見据えたアリアン・ネクスト・ロケットのプロジェクトの進捗について紹介している。その紹介記事には以下のことが書かれている。
アリアン6の運用開始が2021年下半期に予定されている一方、欧州ではアリアン6の後継機として利用したいアリアン・ネクストの準備を進めている。アリアン・ネクスト・プロジェクトの目標はアリアン6よりもコストが半分になるロケットの開発である。
コスト半減が可能になる主要な要素は打上げオペレーション・システムと、どのような衛星・宇宙機の打上げミッションにも対応できる柔軟性であるが、その点、これまでの研究で導かれた技術・システムは、
・2段式の液体推進ロケットで1段目が再使用可能、
・推進剤にはメタンを利用、
・1段目も2段目も同じタイプのエンジンを用いる、となっている。
CNESのアリアン・ネクストのプロジェクト・マネージャであるヴィエイユ氏は「再使用型の経済効果を得るにはロケットを単純化し、また機器・材料に必要な制約を少なくすることである。メタンの利用はそれに適している」と話している。
メタンの液化温度は-160℃で、現在使われている液体水素の-253℃よりも高く、また密度も酸化剤の液体酸素に近いので、ロケットの設計や地上設備も簡素化され、それが大きなコスト削減になるとのこと。
現在CNESと欧州宇宙機関(ESA)、アリアングループ社などのパートナ企業は第1段の再使用化とメタンを推進燃料に利用する技術研究開発を進めている。再使用型の第1段にはテミス(Themis)実証機、メタン推進にはプロメテウス・エンジンのプロジェクトが進められており、これらの成果をまとめあげられてアリアン・ネクストの概要仕様が決定してくる。
その後ESAの閣僚級会議にかけられそこで承認されると、アリアン・ネクスト・プログラムが正式に始動し開発が始まる流れになっている。
これら将来のロケットについての研究開発は、CNESでは未来イノベーション・ロケット(FIL)部署、ESAでは将来ロケット準備プログラム(FLPP)の部署が担当している。
ソース:CNES(15/09/2020)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20200921-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。