posted: 2020/11/04
update: 2020/11/04
2020年11月3日、欧州宇宙機関(ESA)は民間の小型ロケット事業を促進するためドイツのスタートアップ企業3社と支援契約を結んだ。
これは2019年11月のESA閣僚級理事会で承認された「商業宇宙輸送サービスと加盟国のプログラムへの支援」プログラム(Commercial Space Transportation Services and support to Member States programme)」の一環のBoost!補助金&サポート・プログラムでの支援である。
現在宇宙ビジネスは魅力的なものとなり、小型衛星の打上げ需要も飛躍的に増加している。Boost!はそのような状況を鑑み、加盟国の宇宙ビジネスの競争力と欧州の新しい宇宙輸送サービスを促進する目的として開始された。
Boost!は、2020年4月28日に補助金&支援応募申込みが開始され、今回が第1回セレクションの結果の支援契約締結となる。4月28日時点で同プログラムに参加している国はドイツ、イタリア、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スウェーデン、イギリスとなっている。
今回受給対象に選ばれた3社(概要は下記)は成長している小型衛星市場に向け新しい小型ロケット打上げサービスを提供しようと開発に取り組んでいる企業である。ESAは補助金、専門家のアドバイス、試験施設の利用を提供するとのこと。
また、この3社はこのESAのBoost!にドイツから推薦されて選考されることを頭において、その前段階としてドイツ航空宇宙センター(DLR)の小型ロケット・コンペ(Microlauncher Competition)に参加した。そして優秀な成績をおさめ総額2500万ユーロを獲得し、プロジェクトを進める助けにしてきた。
現在のBoost!は2020年第2四半期から2022年第4四半期までの作業をカバーするものだが、ESAは今後も継続して募集を受け付けていく。
補助金&支援受給に選ばれた企業
1/ ハイインパルス・テクノロジーズ社(HyImpulse Technologies:本社ノイエンシュタット・アム・コッハー)3段式の小型ロケットSL1を開発中。液体酸素、パラフィンを推進剤にしたクリーン・ハイブリッド推進のロケット実現を目指す。
2/ Isarアエロスペース・テクノロジー社(Isar Aerospace Technologies:本拠地ミュンヘン)バイエルンにあるESAのビジネス・インキュベーション・センター(ESA-BIC)の支援を受けた会社。小型衛星市場用の2段式のSpectrumロケット開発に取り組んでいる。
3/ ロケット・ファクトリー・アウクスブルク(RFA/Rocket Factory Augsburg:アウクスブルク)OHB社の傘下でミュンヘンのベンチャーキャピタルのアポロ・キャピタル・パートナーズの資金援助を受けている。3段式で、ミッションの柔軟性のため軌道段を持つRFA ONEロケットに取り組んでいる。
ソース:ESA(03/11/2020、Boost!のページおよび応募要項)、Space News(03/11/2020)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20201104-02
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。