posted: 2020/10/26
update: 2020/10/26
2020年10月25日付のル・モンド紙デジタル版にCNES(仏国立宇宙研究センター)のジャン=イヴ・ルガル総裁のインタビューが掲載されている。
インタビューで同総裁は、現在宇宙業界は既にポストNewSpaceの時代に入っているとし、それについて以下のように話した。(要約)
過去5年間、CNESを始め宇宙業界は変化を体験してきた。新規の投資家が民間資金を様々な方法で宇宙業界に持ち込み、方法論を変え、技術開発のやり方も変えさせた。それがNewSpace時代であった。
NewSpaceは今総括すると2つの点での大きな変化をもたらしたと言える。1つは低コストで宇宙にアクセスできる低コストロケット・プロジェクトの到来で、欧州ではアリアン6とヴェガC、アメリカではスペースX、ブルー・オリジンなどの再使用型ロケットの開発である。
もう1つは衛星分野がさらに技術革新を享受している点である。特に小型化が挙げられ、小型化はコスト低減も可能にしている。
つまり、多くの企業が宇宙分野に参入したくなり、また参入できるようになった。
しかし、それでもまだ民間の宇宙分野への投資は相対的に少ない。大きなリスクが伴うことが原因である。一方、公的資金の投資は増加している。
ここ数年、CNESの予算は年ごとに10〜15%増えており、28億ユーロに達している。ESA(欧州宇宙機関)の2020年〜2024年の予算は144億ユーロとなっている。また、欧州連合(EU)の宇宙予算は2021年〜2027年で149億ユーロである。これらは、宇宙分野の事業・活動の意義がさらに重視されてきたことを表している。
ポストNewSpaceとは、新規参入者や新規民間投資による先端技術の導入、そして政府・公的機関の大きな投資、公的機関が業務を託す成熟した宇宙企業とのこの時代の新しい形の関係、という要素が絡まりあって進んでいく、新しいモデルで成り立つ時代である。これから10年がその時期となる。
ソース:Le Monde(25/10/2020)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:N20201026-02
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。