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wrote: 2020/09/11
update: 2020/09/14
2020年9月9日付けでフラスペ ・ニュース「宇宙気候観測機関(SCO)のフランス支部、第2次プロジェクト募集を開始」をアップしましたが、そのSCOについて、概要、作られた背景、経緯、構造などを紹介します。今回の「SCO - 宇宙気候観測機関(1)」では概要と経緯を書きます。
概要
SCOとは、気候変動がもたらしている影響を観測とデジタル・モデルをベースに正確にモニタリングして評価していけるよう、国際間の協力を促進する目的で作られた国際協力構造です。
「宇宙気候観測機関」のように「機関」として和訳しましたが、名称は英語でSpace Climate ObservatoryのSCOなので「宇宙気候天文台」「宇宙気候観測所」ともいえます。今後のSCOの発展の状況によって公式的な機関となっていく可能性もあるでしょうし、このままかもしれません。
各国の機関が協力し、それぞれの加盟国がその国の衛星が取得したデータ提供して、それらを利用して地球上に起こっている問題に対処するという構造は国際災害チャータの協力と似ています。実際、SCOプログラムでは2022年くらいを目指してチャータ機構にしようという案もあります。
2020年現在、SCOには27の宇宙機関、国際組織が参加しています。
設立までの経緯
「こういうの作ろうよ」と設立が提唱されたのは2017年12月にパリ近郊で開催されたワン・プラネット・サミットの機会でした。言い出しっぺはフランスです。サミット前日の12月11日、パリの仏国立宇宙研究センター(CNES)の本部で宇宙機関長会議が行われました。JAXAの奥村理事長(当時)も参加しています。そこで「SCO設立に向かって」という宣言が採択されます。パリ宣言と言われています。この採択によって設立が「決定」したわけではなく、この宣言は「SCOの設立を提案しよう」というものです。
そして翌12日のワン・プラネット・サミットですが、12の国際コミットメンツの中の5番目「脱炭素経済への移行を加速」のところに反映されます。そこには欧州全ての宇宙機関と中国、インド、ロシア、メキシコ、モロッコ、アラブ首長国連邦を含めた他国の宇宙機関も支持していると書かれています。
その後CNESを筆頭に各宇宙機関や気象機関なども含め準備が進められていきます。SCOのトップやプロジェクト・マネージャーの人選、作業部会の発足、トゥールーズ・宇宙ショー(2018年6月)の際のラウンド・テーブル討論の論題に挙げての宣伝などです。
そして2019年6月、パリ・エアショーの機会にCNESのパヴィリオンで世界の複数の宇宙機関トップがいる中、マクロン仏大統領がSCOの正式なスタートを発表しました。
次回につづく
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20200910-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。