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wrote: 2019/08/10
update: 2019/08/10
2019年8月7日、フランスの経済紙レゼコーは、今盛んに計画されている低軌道の大規模衛星システムでのルール作りにおける欧州側の懸念を取り上げている。その要旨は以下のようになっている。
主にアメリカで多数計画されている低軌道の大規模衛星システムであるが、欧州側はそのルール作りについて全く進んでいない。もしルールが決められていく過程に欧州が不在であれば宇宙での交通運送などのマネージメントは米連邦通信委員会(FCC)はじめアメリカ側が一方的に決めていく形になり、ルール作りに出遅れた欧州にとっては大変不利な条件も受け入れなくてはならなくなる。
欧州委員会(EC)はこの春欧州のメーカやオペレータらに「米政府が考えているデブリ管理システムは利用が有料になる可能性もある。それは宇宙でのアメリカの優位をさらに強めることになり、欧州の宇宙へのアクセスを妨げることにもなりかねない」と懸念の意を示したが、その後具体的なルール作りの前進は見られていない。
これまで高度3万6000kmの静止軌道で衛星を運用するユーテルサット社、インテルサット社、SES社などはオペレータ業界間で合意を結び、運用を終了した衛星は自身が軌道離脱させるのを基本としてきた。しかし現在はかつてないほどの勢いでシステム構築が進行している低軌道衛星については、今のところその軌道離脱、故障時の対処、デブリ化防止対策費用の負担者等のルールは出来上がっていない。アメリカではFCCが策定を任されているが、そのルールは義務でなく規範の形になると見られている。
技術は法的規制の先を行く。海洋の原油流出防止規制を義務化するまでに10年がかかっている。そして国連の国連宇宙空間平和利用委員会(UN-COPUOS)は機能不全の状態にある。
そんな中、ECはFCCが定める規範が欧州の宇宙産業に不利な条件を課すものでなく、全世界で宇宙デブリに対処していこうという全体的なアプローチを進めるものであって欲しいと願っているとのこと。
ソース:Les Echos (07/08/2019)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20190810-1
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。