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wrote: 2019/05/16
update: 2019/05/21
2019年5月15日、フランスの経済紙レゼコーは同社サイトにルクセンブルグの衛星オペレータの状態と動きについての記事を掲載している。記事は、欧州宇宙機関(ESA)のメンバーでもあるルクセンブルグであるが、アメリカとの関係における利点は大きく、ますますアメリカ寄りと欧州寄りの二面性が顕著になってきているというものであった。
ルクセンブルグには国が支援して立ち上げたSES社のほか、実はインテルサット社もルクセンブルグに籍をおいている。インテルサットの実質的中枢はアメリカにあるが、法的本社はルクセンブルグにあるという形になっている。
その記事の論述の構成は以下のようになっている。
ルクセンブルグに籍を置くSES社、インテルサット社の従来の主要市場は放送かデータ通信であるが、現在そのサービスの売上げは横ばい状態である。そしてモバイル通信のコネクティヴィティのサービスは未だ目立った飛躍がない。
しかし面白いことに両社はアメリカでの5G通信の周波数バンド運用権を保有している。新しいバンドシェアの割り当てではインテルサット45%、SES45%、ユーテルサット5%、テレサット5%という配分になった。ユーテルサットCEOは、5G通信用周波数はアメリカのケーブル通信の大手らに大変利用されているもので、アメリカとしてはそれを取り戻して5G通信オペレータらに再販したいところだと話している。そして再販額は150億USDにも上り、衛星オペレータのおおよその年間売上130億USDを上回ることになる。
SES社、インテルサット社ともに負債を抱える企業である。この5G通信の権利は打ち出の小槌ともなり得る。一方アメリカ側も上院議員が、このような利益をみすみすルクセンブルグに渡すのはどうかとFCCに問題提起したという動きもある。
2019年5月10日、ルクセンブルグとアメリカ包括的宇宙協力の合意を結んだ。具体的な個別案件の協力の開始でなく全方面にわたり協力していこうというものであるが、既にSES社およびインテルサットは欧州のエアバス製やタレス製よりもボーイング製の衛星を購入する方向でいくとしている。またSESはこれまでも複数回欧州のアリアンでなくスペースX社のロケットを同社の衛星打ち上げに利用している。
このようなことから、ルクセンブルグのアメリカ寄りと欧州寄りの二面性がますます顕著になってきている、と締めくくる記事であった。
ソース:Les Echos (15/05/2019)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20190516-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。