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2019年7月のガリレオの不具合:EUはもう目を背けてはいられない(1)

P190321 Galileo.jpg欧州のGNSSであるガリレオ・システムは2019年7月11日からおよそ1週間信号が不通となった。フラスペ ・ニュースでは7月16日と7月22日に紹介している件である。この不具合についてフランスのメディア「レクスプレス」が複数の関係者・専門家の意見を交えた論説記事を挙げている。その論旨をまとめると以下のようになる。


1/ もう失敗できない


今回の不具合は7億のユーザーに影響を及ぼしたが、大惨事を招くような結果にはならなかった。しかし2021年に予定されている完全運用開始後はそうはいかない。ガリレオ信号はアメリカのGPSよりも精度が高いと謳っており広汎な分野のアプリケーションに利用され将来の経済を担うことになっている。またガリレオは欧州がGPSへの依存体制から脱却するための大変重要なシステムである。宇宙インフラの管理においても脱GPS依存は必須である。


2/ 不具合時と事後の対処の曖昧さ:プログラム管理体制の複雑さ


今回の不具合について欧州GNSS機関(GSA)は不具合の発生と復旧、そして調査委員会を設けることについての発表は行なったが、その間の対処法や復旧後の原因の説明などはなく全体的にぼやけた形でことが過ぎていった。この曖昧なままで過ぎていく状態にはECのプログラム管理体制の複雑さが影響しているからではないか。


ガリレオはECのプログラムだが、そのEC、そしてその機関であるGSAには欧州宇宙機関(ESA)のように技術面を統括する能力がない。そのため技術面の統括にはESAの専門能力を借りる形になっている。またEUを通して予算を拠出しガリレオに参加する各加盟国にはECのカウンターパーティとしてそれぞれのGNSS担当部署がある。しかしGNSSでも国内の安全保障に関する部分にはECの権限を及ぼすことはできない。このような構造の中、EC、GSA、ESA、各国の担当部署との間に意向の違いや力の論理などが存在し、コンセンサスを得るのが難しかったり、迅速に対応できなかったりする状況になっている。


しかし、そもそもこのような複雑な体制になったのも、これらそれぞれのパーティの意向を汲める形にし、大きな反対意見を治めることを鑑みたからであった。例えば大口の出資国ドイツは自国の産業に多く仕事を卸すようECにプレッシャーをかけてくる。本来は自由競争による調達がECの原則だが、大口出資国の意向を汲まないとプログラム自体が潰れてしまう可能性もある。こういった状況からガリレオの体制も複雑になってしまった。


ガリレオ:EUはもう目を背けてはいられない(2)に続く



ソース:L'express(26、27/08/2019)



文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:D20190830-1