Pick Up 記事
wrote: 2019/07/05
update: 2019/07/06
2019年6月18日、ドイツ航空宇宙センター(DLR)は再使用型ロケットの研究プロジェクトの開始を発表した。プログラムの名前はRETALT(RETro Propulsion Assisted Landing Technologies)、いわば逆噴射エンジン利用着陸技術といった命名である。実物大の実証機は製作しないが、小型版で一部再使用型(RETALT 1)、全再使用型(RETALT 2)を作り、風洞実験、サブ・オービタル飛行などを通してデータをとる。
3年計画のプロジェクトでDLR航空力学・フロー技術研究所(ケルン)が、CFS エンジニアリング社 (スイス)、エレクノア・デイモス社 (スペイン)、 MT エアロスペース社(独)、アルマテック社(スイス)、アモリム・コルク社(ポルトガル)の5社からなるグループの指揮をとり進められる。またこのプロジェクトは欧州委員会のホライゾン2020(H2020)の研究補助金を受けている。
このDLRのプロジェクト発表を、フランスの科学技術情報サイトのフュチュラは業界における再使用型研究・実用の論点・動向も含め紹介している。そこで書かれたことを端的にまとめると以下のようになる。
・スペースX社は一部再使用型のファルコン9ロケットプログラムを着々と進めている。
・また多くのメーカが再使用型ロケットへの道を模索している。
・しかし依然として再使用型の経済性には不確実性がある。
・例えばロシアのメーカは再使用型に採算性ありとは考えず、それより従来の使い捨て型で超低価格ロケットビジネスをする方が経済効率が良いと考えている。
・欧州ではアリアングループ社、仏国立宇宙研究センター(CNES)、欧州宇宙機関(ESA)が協力して第一段再使用、モジュール構成、超低価格のテミス(Themis)ロケットの研究開発に取り組んでいる。これには液体酸素/メタンの推進剤を利用するプロメテウス・エンジンが利用される。この第一段は2025年頃の最初のアリアン6の大幅改良の際か、アリアン6の後継機で2020年代の終わり頃の導入を目指しているアリアン・ネクストに用いることが想定されている。
ソース:DLR(18/06/2019)、Futura(25/06/2019)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20190705-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。