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CNES(仏国立宇宙研究センター)ルガル総裁、アルテミス計画を語る

P20200926 Orion Artemis.jpg2020年10月16日、CNES(仏国立宇宙研究センター)のルガル総裁はテレビのEurope1チャンネルの番組に出演し、 NASAが主導し複数国が参加する月探査プログラムのアルテミス計画についてインタビューに答えた。

インタビューは、10月13日にオーストラリア、カナダ、イタリア、日本、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦(UAE)、イギリス、アメリカの8ヵ国がアルテミス協定に署名したことや、同計画のためエアバスDS社やタレス・アレニア・スペース(TAS)社など欧州企業が機器・システムを提供する大きな契約を受注したことから、ルガル総裁自らその背景や概要、展望を一般視聴者に話す、というものであった。



NASAの欧州宇宙企業の機器・システムの調達について

欧州宇宙機関(ESA)はNASAにアルテミス計画への参加の意思を示し、欧州の貢献分についてNASAと話をしていた。そしてESAは既にエアバスDS社にアルテミス計画に用いるオライオン宇宙船の欧州サービス・モジュール(ESM)の納入契約を発注していた。

さらに今月、ESAは欧州大型ロジスティクス着陸機(EL3)の設計フェーズをエアバスDS社に発注した。設計フェーズだがそれはすなわちその後開発、製造に続くことになる。(フラスペ ニュース 2020年10月14日付け「ESAの月探査:エアバス、欧州大型ロジスティクス着陸機(EL3)の設計フェーズを受注」を参照)。

TASは10月13日、欧州宇宙機関(ESA)と月周回ステーションとなるGatewayのため通信・供給モジュールEspritと長期滞在モジュール I-Habの開発納入の開発納入に関する契約を結んだ。

インタビューでは、このように欧州宇宙企業がその機器・システムを提供することになったのはどういう成り行きかという質問があった。それに対しルガル総裁は、まず第一にESAは2019年のESA閣僚級会議でアルテミス計画への参加を決定したという欧州のアルテミス計画への意欲の点を挙げた。欧州の意欲とはESAだけでなく欧州の宇宙産業の意向も含まれていると解釈できる。その次に、NASAは欧州宇宙企業の技術力を信頼しており、それだから欧州企業に重要な部分を預けたということが挙げられる、という返答があった。


なぜ有人探査ミッションか

インタビュアーは「有人探査ミッションはロボットによる探査に比べ莫大な費用がかかるが、それをやるのは何故か」という質問をした。それに対しルガル総裁は、まず有人探査とロボットによる探査の2つが必要であるとした上で有人探査の利点をアポロ17ミッションの例を挙げて話した。

同総裁は、アポロ計画では最後のミッションとなったアポロ17であるが、それには地質学者のシュミット宇宙飛行士が参加し、科学面ではこれまでのミッションで得たもの全てを足した分を上回るほどの成果をもたらした、と話した。そして、人間の目で見るものは、AI技術でもたどり着けないものもある、と加えた。

フランス人宇宙飛行士、特に今フランス人でESAの宇宙飛行士として活躍しているトマ・ペスケの月有人ミッションへの参加可能性についての質問については、トマ・ペスケは既に6ヵ月のISSミッションを完遂した経験があり、また2021年には再びアルファ・ミッションで長期滞在することになっている、彼には十分月ミッションをやれる資質があり、その可能性もある、と話した。

また、有人ミッションにはお金もかかるが、経済面についてその経済還元は大きいものであり、技術レベルも高めていけるもので、我々の未来を創っていけるものである、と話した。

月は誰のもの?

インタビューの最後に「月は誰のものか」という質問があった。ルガル総裁は「月は誰のものでもない」とした上、アルテミス協定について様々な議論がなされており、月に人が滞在するためにはどのようなルールを作ったら良いかが検討されているところだ、と答えた。


ソース:Europe 1 (16/10/2020)

文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:D20201017-01