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解説・特集COMMENTARY / FEATURE

欧州宇宙政策

ESA閣僚級会議 Space19+に向けて:ユーロスペース協会の意向(2/項目別)

P190323 Ariane family.jpg前回ASDユーロスペース協会が策定した2019年欧州宇宙機関(ESA)閣僚級会議のための意向・提案レポート「Towards an ambitious ministerial "Space19+" - Eurospace views, 2019」の概要を紹介した。今回はそこで具体的に挙げられている科学・探査:60億€、アプリケーション:44億€、実現のためと支援:37億€、宇宙の安全性と保安:19億€の提案についてもう少し詳しく記述する。(*これらは単年度予算でなくプログラム実現のための複数年予算の額であることに留意ください。)

1/科学・探査:60億€
科学分野では宇宙から重力波を観測するLISA(Laser Interferometer Space Antenna)プログラム、高エネルギー宇宙物理学研究のためのX線望遠鏡ATHENA(Advanced Telescope for High-ENergy Astrophysics)プログラムを中心に予算を充てる。この2つはESAの宇宙科学分野のコズミックビジョン・プログラムの枠組みで、大型ミッション(Large=カテゴリ"L")に選ばれ進められているものである。LISAがL3、ATHENAがL2に選ばれている。探査分野では月・火星ミッションへの予算投入が挙げられている。まず無人、つまりロボティクスによる探査で、また国際プログラムに参加する、あるいは国際協力を仰ぐという形が主に提案されている。

2/アプリケーション:44億€
この予算は特に光学通信を筆頭とした5G時代を視野に入れた総合的な宇宙通信実証に重きを置く方針が書かれている。具体的には通信17億€、地球観測26億€、ナヴィゲーション1億€とその他、という明細が挙げられている。通信には宇宙の安全性、保安のための宇宙ベースの通信アプリケーションに予算を注ぐことが必須とされている。地球観測ではEUのコペルニクスプログラムのためのアプリケーションの発達、展開のために予算を増やすべきと書かれている。

3/実現のためと支援:37億€
この項目では全般にインフラとプロセスのデジタル化のための努力が推されている。ロケット分野ではアリアン5からアリアン6へ、ヴェガからヴェガCへ、という移行を実現するための予算、その2つの更なる発展形への取り組みへの予算投入は必至である、その発展系への取り組みには再使用型の実証機、小型ロケットシリーズの開発、Space Riderを含む再突入機プログラムが挙げられるとされている。そして全般では、ロケット調達について欧州政府系ミッションにおける欧州ロケットの利用に関する枠組み契約の策定の必要性が強調されている。

4/宇宙の安全性と保安:19億€
ここでは宇宙状況監視(SSA)、サイバー攻撃対策、宇宙の安全性と保安のための新たな手段開発への取り組みに関するプログラムへの予算投入が提案されている。そこには低軌道、静止軌道で稼働するシステムの実証、その分野において欧州が世界的主導力を持てること、宇宙防衛実証ミッション、宇宙気候のためのミッションが謳われている。また、宇宙の安全性と保安のためのアプリケーションへの努力も含まれるべきだとされている。


ソース:ASD-Eurospace(20/06/2019)

文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:D20190624-02