特集1
wrote: 2019/08/14
update: 2019/08/14
今回から「解説・特集」のカテゴリで最初にシリーズで挙げていた「特集1 フランス、欧州の宇宙分野の特徴・興味深い点」の続きを掲載させていただきます。
この特集の内容は
1. 欧州の宇宙分野は、役者の数が多く構造は複雑
2. やめられないオートノミーへの努力
・代表例1、ガリレオ
・代表例2、ロケット
3. フランスはロケット推し
となっており、それぞれに紹介・解説文の部分と「裏記事」として所感を載せた部分があります。そして今回は「2. やめられないオートノミーへの努力の代表例2、ロケット」のところからのスタートとなります。
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さて、ロケット分野のオートノミーへの努力ですが、それではこの分野でオートノミーが確保、維持できない状態とはどんなものでしょうか。それは「自分たちが自由に使えるロケットがなければ、自分たちの自由に宇宙活動を行えない」ということです。ロケットがなければどこかほかに打上げを頼むことになるのですが、その場合、まず打上げを請け負ってくれる相手先を見つけられるかの問題があります。そしてもし相手がOKしてくれたとしても高い料金を提示されたり、打ち上げたものの利用条件を相手のいいように課してきたりするかもしれません。
欧州がアリアン・プログラムを手がけていくことになった1960年代後半〜1970年前半は、まさに欧州がこのような状態に陥ることになってしまいました。いわゆるシンフォニー事件というものです。概略は以下のようになります。
・当時静止衛星の通信・放送技術が実用化され始め、それは新しい市場として大変有望で鍵となる分野となっていた。
・欧州も複数の通信・放送衛星プログラムを企画し、その中でもシンフォニー衛星プログラムを成功させたかった。
・しかし、当時欧州が手がけていた欧州ロケット開発機構(ELDO)のロケットは全くもって運用可能な状態になかった。
・それなので欧州はアメリカにシンフォニーを打ち上げてくれないかと打診する。
・アメリカは「いいよ」と答えてくれたが「でもシンフォニー衛星の商業利用はしないでくれ」と条件をつけてきた。
・「えー、なんでだよお」と欧州は納得いかないものの、結局自分らのロケットも無く、ほかに打ち上げてくれるところもないのでどうにもならず、条件を飲むしかなかった。
・そしてシンフォニーは打ち上げられたが、その運用は技術試験あたりで留まり、商業市場で活躍するような発展は見られなかった。
こうしてシンフォニー衛星の件で辛酸を嘗めた欧州は、ますます「自分たちが自由に使える自分たちのロケット」の必要性を深く再認識し、アリアン・プログラムへと進んでいきました。 つづく
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20190814-1
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。