特集1
wrote: 2019/03/23
update: 2019/06/24
前回の特集、オートノミーへの努力、代表例1、ガリレオの続きです。
しかし、考えてみるとGPSはアメリカが運用しています。ましてやGPSはもともとアメリカが軍事用に開発したもののある部分を、民生用にも利用できるようにアレンジして提供しているものです。もし、GPSに何かの機能不全が起こった場合、あるいはアメリカが「もう○○の国ではGPS信号を自由に使わせない」という政策に変換した場合、あっという間にこれまで当たり前のように利用していたサービスが使えなくなります。民間だけでなく政府機関や国防関連でも同じです。またその市場で商売をしていた企業も何もできなくなります。困ります。これがまさに「GPSへの依存」「アメリカへの依存」を表す状態です。そこで欧州は、「いやいや、アメリカに依存したままではいけない、我々自身のGNSSを持たなければいけない」と考え、ガリレオGNSSを作る決断をしました。
この考えから欧州はガリレオに取り掛かりましたが、構築していくのは容易ではありません。プログラムに着手する上で、初期の予算見積もりは34億€でしたが、進むにつれ130億€まで膨れ上がりました。運用のための事業形態の問題や技術的な問題で計画の遅れも見られました。また、欧州が提供するGNSSのプロダクト・サービス市場は本当に拡大するのか、もともと大きく確保された軍事費をベースに作られたGPSと違い、参加国のプログラムへの拠出予算の意向でやって行かねばならない欧州のシステムに採算性はあるのか、など、これまでも、これからも困難は続くと予想されています。
しかし、それでも欧州はこのプログラムを進め続けています。依存から脱却するためにはオートノミーへの努力をやめるわけにはいかないという考えです。
(6) 裏記事に続く
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20190323-05
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。