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解説・特集COMMENTARY / FEATURE

特集1

フランス・欧州の宇宙分野の特徴・興味深い点(3)役者がいっぱいで複雑:裏記事

P190323 Ariane family.jpg「裏記事」の部分では、取り上げてきたものについての所感などを著していきたいと思います。


このように登場する役者の数や種類が多く、構造が複雑な状態は、たとえるなら日本の幕末のようである。諸藩があり、また、それより大きなくくりの「日本」もある。一方、同じ目的のために藩を超えて繋がった勢力もある。そこに新旧体制の変換の議論もある。強い外国への対処も焦点である。新技術の導入も鍵となる。さらに現在の欧州の宇宙部門でいえば「公共事業か民間か」、「デブリは一体どうする」、「宇宙資源利用事業に見られる国際宇宙法と国内法の問題」など、イデオロギー面も大きく関わっている。これらから「似ている」と思う。


ただ、このたとえには最後の場面にずれもある。幕末のてんやわんやな状況は(その後もあれこれあったけれど)、明治維新で一応落ち着く。けれど欧州には明治維新は訪れない。
もともと何百年に亘り「日本」というくくりを仕切っていた幕府のように「欧州全体」を仕切ってきた存在が無いので、それを転覆させるという形は当てはまらない。が、それより欧州は「域内の独立国家を尊重しつつ、それらが協力、団結して1つの力になろう」という理念を持っているのだから、意思決定システムの簡素化や組織の合理化は進められていくだろうけれど、今後も、役者が多かろうと、皆の意見をまとめていくのが難儀だろうと、それらを心得た上で目的のために動き続けていくのだろう。

文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:D20190323-03