特集1
wrote: 2019/08/21
update: 2019/08/21
前回ギアナ宇宙センター(CSG)の話を出した。そこでCSGといえば「ああ、こんなこともあるのか。フランスらしいな」と思ったことを1つ。
それは2017年3〜4月のギアナ危機の話。労働組合、地元コミュニティなど広汎にわたる組織や住民も加わった大規模な抗議行動が起こり、仏領ギアナが一時麻痺状態に陥ってしまった時のことである。
デモ行進、ストライキ、バリケードによる幹線道路の封鎖、空港封鎖など、騒然とした状況が1ヵ月以上も続いたのであった。
そしてCSGもその影響を大いに受ける。CSG内で作業をする企業の社員がストライキを始め、まもなく抗議運動グループは幹線道路の封鎖からCSGもブロックした。さらに立てこもりも発生した。アリアンスペース社は3月20日にアリアン5の打上げ(VA236)を予定していたが、当然打上げ準備もできずメドが立つまで延期と発表された。
抗議行動の背景にある原因は、仏領ギアナの生活から体制に至るまでの全般的困窮状態にあった。高い失業率、治安の悪化、違法な鉱物採掘、自治権の範囲などが問題となっていた。それらを改善に導こうと抗議グループらは本国政府に抜本的な自治政策改善と助成金(地方交付税交付金のようなもの)を求めたのであった。
仏領ギアナには「ギアナの経済を回している」と言われるロケット事業がある一方でそれに関わっていない人々のそんな生活もあったというのだ。メディアでは「ギアナの光と陰」などたとえられたりし、なんだか複雑な気持ちになってしまった。
裏記事 後編につづく
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20190821-1
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。