特集1
wrote: 2019/08/19
update: 2019/09/03
前回まで欧州のオートノミーへの努力の話でロケット分野について紹介してきました。そこで今回は、今度はフランスの宇宙分野の特徴・興味深い点として「フランスは大いにロケット分野を推している」という点を挙げます。
もちろんフランスはロケット分野だけに力を入れているわけではありませんし、欧州の他の国々がロケット分野をぞんざいにしているわけでもありません。
しかしその中でもフランスのロケット分野に対する意志は強くアリアンプログラムでも重要な役割を担っています。そこで欧州宇宙機関(ESA)のロケットプログラムへの予算拠出額以外にもそれがわかりやすい例を3点挙げてみました。
1/ まずアリアンプログラムの開始の頃に遡ってみましょう。欧州は欧州ロケット開発機構(ELDO)でヨーロッパ・ロケットを稼働させるプログラムに取り組んでいました。3段式のロケットで、1段ずつイギリス、フランス、ドイツが別々に開発し提供し、最終的にそれらを合わせる形で作られたものです。
しかし、そのロケットは運用できない状態で終わりました。結局、プログラム全体が総括的にマネージメントされる形でなかったため、技術面では整合性を欠いた作りになったり、経済面でも契約決定権が散在し調達費用が増加したりしたのが原因でした。
その反省から、次の欧州ロケットプログラムには全体を統括する係が必要だと考えられます。そこでフランスはその問題点を克服するL3Sプログラム案(後にアリアンプログラムに発展していくもの)を策定し、自ら全体を統括していく役を担っていこうと考えます。そして欧州内のあれこれの交渉の後、ESAからその権限を託された仏国立宇宙研究センター(CNES)は強いプログラム統率権を持ってアリアン開発を進めて行くことになりました。
次回に続く
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20190819-1
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。