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解説・特集COMMENTARY / FEATURE

特集1

フランス、欧州の宇宙分野の特徴・興味深い点(10)やめられないオートノミーへの努力、代表例2 ロケット:裏記事 後編

P190323 Ariane family.jpgロケット分野に関する欧州のオートノミーへの努力について、裏記事の続きです。

・ロケット分野でのオートノミーか・・・。ロケットの主目的は輸送であるから、輸送系のものを想像して考えてみる。


シンフォニー衛星の件に当てはめてみると、例えば東京から大阪へ何か画期的な商品を運びたかったとする。けれど自社はトラックを持っていない。それなので運送会社に頼むとかレンタカーで運ぶというアイデアがあったが、問い合わせると「運んであげるよ、でもその商品、大阪で売っちゃダメ。だって僕らも似たような商品を大阪で売るつもりだからさ。わざわざ競合相手を増やしたくないよ」と言われた、といった感じだろうか。ということで大阪に商品を運びたい会社はトラックを買うなりして、自分らの思うように使えるトラックを調達しなければならなくなる。

・上記の例はトラックで、今では大抵どのトラックでも基準を満たしたものならば公道を走行し商品の輸送ができる。だから、トラックという輸送のハコだけ購入すればよい。けれど現在の宇宙輸送の場合はロケット自体の機体の調達、積み荷(衛星など)とのマッチング、射場、追跡、などが一緒になっている。それなのでトラックの輸送サービスとは一緒にはできない。ロケットの機体だけ買えばいい、というわけではない。

・ということは、逆に、いつかトラックのようにどこから出発してどこに着いてもいいロケットというのもできるのかな? 射場、安全ディバイス、管制、輸送品である衛星の梱包(ロケットの中で運ばれている時間や放出時の条件)など全ての規格が標準化され、クールーでも種子島でもフロリダでもヴォストチヌイでも打上げられるロケット。今のように射場に紐付いた総合打上げサービスでなく、どこへでも機体を配達納入する形。車でいえばトヨタ車やホンダ車、飛行機でいえばエアバス機やボーイング機、ロケットでいえばアリアン機やスペースX機、など言われる日がくるかもしれない。実際、水平離陸の航空機がアシストするサブオービタル宇宙飛行などは、既にそのベースの要素が揃っている。

国防ミッションなどデリケートなものは難しいだろう。またある程度の射場や管制環境とのすり合わせは必要だろうけど・・・・。商業打上げ市場では、ニューススペースの進む先にそんなものもあるかもしれない。

こんな、主にロケットの機体だけを製造・販売するメーカが出てくる形になるとまた業界の様相もガラっと変わるだろう。ただ、その場合、欧州はますます不利になるかな。

次回「特集1:フランス、欧州の宇宙分野の特徴・興味深い点(11) フランスはロケット推し」に続く

文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:D20190814-4