フランス語では?
posted: 2019/07/02
update: 2019/08/29
欧州宇宙機関(ESA)の協力国でもあるカナダ宇宙機関、その略語はカナディアン・スペース・エージェンシー(Canadian Space Agency)のCSAとされることが多い。だが一方で、カナダのもう一つの公用語であるフランス語であらわした機関名 Agence Spatiale Canadienne からASCという略語もある。実際そのロゴにはCSAとASCの両方が載せられている。そう、同じアルファベットを使っているけれど順序が違っているのだ。
このようにアルファベットの世界では、たとえ多少の綴りの違いはあるにせよだいたい同じような言葉を使って表されている語句でも、言語によって並び方が違うためにその略語も違ってくるんだ、とつくづく感じたことがあった。そして、我々は英語のものが一般的(或いはそれしかない、それが正しい)と思って育ってきたんだな、とも実感した。
・・・・と、まじめ風に書いたが、実は英語ヴァージョンでない発音にクスっと笑っていたりもした。
その代表例が国連(United Nations)のUN。フランス語で国連は「機構」を表す Organisation という単語を加えてOrganisation des Nations unies、という。(1つ足された des は「〜の」の意味 )。そしてその略語が「ONU」。で、読みは「オニュ」。冠詞の the にあたるものをつけると「l'ONU」で読みは「ロニュ」となる。も〜う、どっちもむにゅむにゅした感じで、オニュでクスッ、ロニュでプッっと、このことは日々の疲れを癒してくれるような平和で慎ましやかな笑いを与えてくれた。
同様に発音の点で微笑んだのがNATO北大西洋条約機構。これは Organisation du Traité de l'Atlantique Nord といい、略語はOTAN、発音はオタン、冠詞をつければロタン。ナトーがオタンかぁ。こんな頭文字の順序やそれに伴う発音など、なんだか言葉パズルのクイズになりそうである。
では、発音はともあれ略語の順序が違う形で表されている例を数件挙げてみる。(注:フランス語に限らず、英語とは違う語句の並べ方をする、例えばラテン語系のスペイン語、ポルトガル語、イタリア語などでもこんなことが見られるケースがあることも付け加えておきます。)
・欧州連合 EU = UE (Union Européenne)
・アラブ首長国連邦 UAE = ÉAU (Émirats Arabes Unis)
・付加価値税 VAT = TVA (Taxe sur la Valeur Ajoutée)
・非政府組織 NGO = ONG (Organisation Non Gouvernementale)
・病院の検査で使うMRI (Magnetic Resonance Imaging)= IRM(Iimagerie par Résonance Magnétique)
そういえば欧州宇宙機関 ESAも、国内或いは仏語圏向けメディアでは ASE (Agence Spatiale Européenne)と書かれるケースも多々あることを思い出した。
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:Y20190701-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。