時代くらべ
posted: 2019/08/29
update: 2020/08/12
欧州やフランスの歴史の話を聞いても、いったいその頃日本はどんな時代だったのかどうもピンとこないことがある。それなので今回はエンジンやそれにまつわる技術の発展の歴史の中でわりと聞いたことがある事がらについて、その頃はどんな時代だったのかを挙げてみた。
1/ フェルビーストの蒸気自動車(1660-1680年頃) → 4代将軍家綱の頃
フェルビーストは今のベルギー出身の宣教師で17世紀中盤に中国まで行き、清朝、主に康熙帝の時代にヨーロッパの進んだ技術を伝え重用された人物。中国で蒸気自動車を走らせるデモンストレーションをしたとのこと。その頃の日本といえば徳川4代将軍家綱の施政の頃で、水戸黄門の徳川光圀が「大日本史」の編纂を手がけていた頃とされている。
その頃のフランスといえば絶対王政の最高潮、「太陽王」と呼ばれるブルボン朝のルイ14世がヴェルサイユ宮殿であれこれ栄華を誇っていた時代である。
2/ ニューコメンの大気圧エンジン(1712年) → 6代将軍家宣、7代家継の時代
蒸気機関技術を初めて実用化したイギリスのニューコメン。彼は鉱山の採掘現場の排水のために蒸気機関の仕組みの、いわゆる大気圧エンジンを作った。そしてそれはその後の蒸気機関技術運用の先駆けとなり、また産業革命の発展に繋がることとなった。
ニューコメンがその大気圧エンジンを利用した排水システムを実現したのは1712年とのこと。この18世紀初頭、日本は6代将軍家宣、7代家継の時代で、新井白石や浄瑠璃の近松門左衛門が活躍していた頃である。
3/ キュニョー(Cugnot)の蒸気三輪自動車(1769-1771年頃:仏) → 10代将軍家治、田沼意次の頃
この人は日本ではちょっとマイナーだったろうか。キュニョーはフランス人の軍事技術エンジニア。自ら走行する車両・機械といえる「自動車」の先駆者である。日本では田沼意次が老中格〜老中と力をもって政治をしていた時代の人。それは例えば杉田玄白で有名な解体新書や平賀源内のエレキテルなどができあがってきた時代であった。
4/ ワットの蒸気機関改良作業(主に1760、70年代:英) → 同じく10代将軍家治、田沼意次の頃
ニューコメンの蒸気エンジンシステムを改良し、より産業での実用化が可能なものを開発・実用化していったワット。日本では上記のように田沼時代。思えば それから約100年後、蒸気船を操るペリーのチームが浦賀にやって来て、日本はおおわらわとなる。
ワットの時代、アメリカでは独立戦争(1775年〜)が起こっていた。一方フランスといえば革命前の最後の王様ルイ16世の時代に入ったあたりとなる。
次回につづく
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:Y20190829-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。