宇宙
posted: 2020/12/05
update: 2020/12/05
1つ前のよもやまコラムで、ヨットレースにも宇宙技術が使われていますという話を書いたのですが、まさにそれが使われたというニュースがあったので、続編を書きますね。
2020年11月30日のことです。単独無寄港世界一周のヴァンデ・グローブ(Vandée Globe)ヨットレースでケヴィン・エスコフィエ選手のヨットが大波を受け、その船は2つに割れてしまい、みるみるうちに沈んでいってしまったそうです。
エスコフィエ選手はトップ争いをしており実力があると評判で、そのチームも経験を積んだスタッフが揃っているところだったので、ヨット界では「え〜?」とびっくりしたし、本人は大丈夫だろうか、とすごく心配しました。
この件をウェブサイトで取り上げた仏国立宇宙研究センター(CNES)はこう伝えています。(要約)
「船体は2つに割れどんどん沈んでいくという緊急で時間もない中、エスコフィエ選手はそれ用の救命胴衣を装着し、救命信号を送った。そして13時48分(UTC)、衛星はその救難信号を受信した。3分後の13時51分(UTC)、救難信号対応のオペレーションを担っているCLS社(CNESの子会社)は、Cospas-Sarsatプログラムに参加しているMEOSAR衛星システムを経由して信号を受け取り、エスコフィエ選手のレスキューのために皆に連絡するなど救難対応にとりかかった」
Cospas-Sarsatというのは、衛星を用いた救難サーチ&レスキューのための国際協力プログラムで、測位分野では欧州のガリレオ、アメリカのGPS、ロシアのグロナス、中国の北斗なども参加しています。欧州のガリレオも参加しているので、欧州宇宙機関(ESA)もこのエスコフィエ選手の遭難からの救出にガリレオが役に立ったという記事をアップしています。
さて、海に漂い、辛い状況のエスコフィエ選手について。大会本部は彼を救うため衛星による位置確認で得た情報をもとに近いところを航行しているヨットレーサーに連絡しました。
そして数隻のヨットが彼を助けに走ります。ただ、波の状況などで、救助も大変だったとのこと。
最終的にジャン・ル・カム選手がエスコフィエ選手の元にたどり着き、無事に助けることができました。
このジャン・ル・カム選手もものすごい実力派で「キング」と呼ばれているそうです。
エスコフィエ選手を助けるために費やした時間はレースの所要時間から引かれるので成績については問題はないけれど、成績より何より、人命救助に走るのがヨットマンだとのこと。その後キングはまたレースに戻ったそうです。
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:Y20201205-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。