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よもやまコラムYOMOYAMA COLUMN

宇宙

ヨットレースにも宇宙技術:単独無寄港世界一周のヴァンデ・グローブ(Vandée Globe)

P20201120 Vandee globe.jpg最近フランス人の友人がヨットレースのヴァンデ・グローブ(Vendée Globe)にはまっているそうだ。

といっても実際に出場しているわけではなく、実際に出場している人たちに混ざって同じ行程を航海するネットのヴァーチャルゲーム。誰でも無料で参加できるものだけれど、本物と同じ地形や波、風の様子が反映されているので、うっかりしていると小さな島にゴーンと座礁してしまうそう。

レースはおよそ4年に1度開催されておりヴァンデ・グローブ2020は11月8日にスタートした。フランス西海岸のヴァンデ県の港を出発し、大西洋を南下し喜望峰沖を通り、インド洋を横切ってからオーストラリアの南を行く。今度は太平洋に出てくるので南米の南のホーン岬沖を目指し、最後に大西洋を北上して、またフランスのヴァンデ県に戻ってくるといったコースをとる。およそ4万5000kmの行程とのこと。

さて、その友人、最初に私に「ヴァンデ・グローブなんて知らないでしょ」と言ったのだが・・・。いやいや、ヨットレースには全く造詣のない私もなんともはや知ってたんだ。なぜなら、ヴァンデ・グローブが開催される時には必ず仏国立宇宙研究センター(CNES)が一連の記事を掲載し、レースを支援している宇宙技術などを紹介しているから。

ではCNESはどんな技術について書いているのだろうか。
まず、陸地のチームとコミュニケーションをとる時に衛星通信が使われるのは容易に想像できるもっともな話かな。

そして、それよりもう少し専門的でCNESが自身の貢献を紹介しようとしているのが、1つは衛星に搭載された海面高度計とその観測で作る海洋地図を伝えること、もう1つは緊急事態が起こった時に、緊急事態がどこで起こっているかが伝わる位置情報伝達システムである。

CNESは海面高度計の分野で長年専門能力を培ってきた。この分野ではNASAとの協力が長く、1992年のTOPEX-Poséidonミッションから、Jason衛星シリーズまで続いている。今の現役はJason-3。そしてもうすぐ(明日)Jason CS/Sentinel 6が打ち上げられる予定。また、CNESのSARAL/AltiK衛星、欧州連合のコペルニクス地球観測プログラムのセンチネル3衛星も海洋の情報を提供している。

P20201120 Jason 3.jpg

それら衛星が取得する海面高度のデータを地図にまとめているのが、CNESの子会社のCLS社。この地図情報をヨットレースの陸地チームやレーサーにも伝えて、危ないぞ、もうちょっと行ったら〇〇な環境が待っている、など伝えている。ここ3回のヴァンデ・グローブのヨットレースで危なそうな数10個の氷山を検知し、レースチームらに伝えたとのこと。

P20201120 iceberg.jpg










もう1つの緊急事態の際の位置確認は、同じくCLS社が事業を展開しているArgos(アルゴス) システム。地球上を旅する際、アルゴスの送受信機を携帯していき、もしもの際はSOSを送り、衛星通信による測位によって遠くにいる仲間もその人がどこにいるかわかるというシステムになっている。

思えば、友人が参加しているネットゲームの地図、海面情報も衛星が取得する情報からできているじゃん、と気づく次第です。

文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:Y20201120-01