航空・科学技術
posted: 2019/05/10
update: 2019/05/13
神話のイカロス:父親ダイダロスはスーパーエンジニア(1)の続きです。
王女アリアドネの駆け落ちを手助けしたことでクレタ島ミノス王の怒りをかい、自ら作った迷宮に息子のイカロスとともに閉じ込められてしまったダイダロス。彼はどんな作戦に出たのだろうか。
と、もったいぶる必要もない。ここからがイカロスの翼の話である。
ダイダロスは迷宮で鳥の羽と蝋を使い空高く飛ぶことのできる翼を考案し製作した。そして息子のイカロスとともにその翼をつけて迷宮から飛び立つのだが、この発明には使用上の留意点もあった。高く飛びすぎると太陽の熱で羽が燃えるだとか蝋が溶けるといった点である。ダイダロスは息子イカロスに「いいか、くれぐれも高く飛びすぎるなよ」と事前に言い聞かせる。
しかしイカロスは高く飛ぶことに夢中になってしまった。高く飛ぶことの快感、そしてもっと高く、もっと高くという衝動からか。案の定イカロスの翼の蝋は溶け落っこちるという羽目になる。父親は「高く飛ぶなよ」と言っていたのに、その父親の目の前で落下という運命だった。
結局、それでもその後お父さんのダイダロスはとにかく飛び続けシシリア島までたどり着いたそうだ。
と、これがイカロスとダイダロスのお話でした。
まとめ:この話で気づく、あるいは思う点はざっくり4点。
1、とにかくダイダロスはすごい名工で発明者だな(まあ、神話の中の人物であるが)。物作りの業界で「1社に1人ダイダロス」なんてなったら面白い。いや1社に2人、あるいはもっと多くのダイダロスのような人がいたらもっと素晴らしい。さらに物作りの業界だけでなく、どんな業界であれ新しい形、新しい切り込みからのやり方を実現に導くことができる人材は貴重だろう。
2、とはいえ今までになかった新しいものを作っていく分野、特に革新技術開発の分野では、リリースする側も利用者側も新しい製品やサービスのその副作用を心得なければ悲しいことになるのだな。そしてそれがイカロスが利用した翼のような一過性の個人利用レベルでなく社会で多く利用される形になった場合、法的基準の作成など、公的保護も必要になってくるんだろうな。
3、ある程度の歳になっても親の言うことに従うばかりの子供も気持ち悪いが、イカロス、今回ばかりは親父の言うことを聞いとけよ〜。これで人生を終わりにしたくなかったなら。ましてや使っている翼は親父が開発、提供したのだから。といっても後のまつりか。
4、「アリアドネの糸」=「アリアンの糸」・・・「アリアドネ」はフランス語で「アリアン」です。そう、欧州のロケットファミリーの名前。どうして欧州ロケットの名前が「アリアン」になったのか。1970年代初頭まで、問題ばかりで袋小路にはまっていたような欧州ロケットプログラムを迷宮から導き出してくれた「アリアドネ、アリアンの糸」にちなんだからだろうか。この件はまた今度のよもやまか解説・特集のカテゴリで展開したいと思います。
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:Y20190510-02
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。