航空・科学技術
posted: 2019/03/16
update: 2019/03/25
さて、モンゴルフィエ兄弟の気球の第2部。その後兄弟は実験を続け、1783年9月、ヴェルサイユ宮殿で王様&王妃様の前でデモンストレーション飛行を行う。また同年11月には侯爵1人と科学者1人を乗せ初の有人飛行にも成功した。そしてモンゴルフィエ・パパは王宮御用達職人として召されるようになり、また兄弟も勲章を授かったとのこと。
しかし、時代はモンゴルフィエ兄弟とその熱気球の独走を許さない。それは水素気球の開発・実用である。モンゴルフィエ兄弟が熱気球に取り組んでいるのと同じ頃、ジャック・シャルルも空気よりもずっと軽い水素を用いた気球の研究開発を進めていた。学校の理科で習う「シャルルの法則」のシャルルさんである。
その後、水素気球側も研究と実証を重ね、また、熱気球とのハイブリッドのような仕組みなども取り入れられ、気球というものが改良されていく。「自分たちのいる地上にある空気より軽いもの」を使って「上空に飛び立つ」形の「気球」という飛行手段が進歩の道を歩んでいくのである。
さて、掲題の「アヒルか鴨か」について。どうも「アヒル」といえば体は白く、くちばしと水かきが黄色いやつを想像してしまう。ドナルド・ダックのイメージがあるのか、とにかくあんな感じである。一方、「鴨」といえば、茶色や緑の毛などもあるものが思い浮かぶ。日本では呼び名も異なるせいか、どうやら頭の中でのアヒル(家鴨)と鴨を区別してしまっているように思える。そんなイメージではない、という方がいらっしゃったらガンガン教えてくださいね。
しかし、フランスではどちらも「鴨:カナル(canard)」と呼ばれる。家で飼っているものも、野鴨も、食用の養鴨のカモも皆同じ。そこで長年知りたいと思いつつ答えが出ていないギモンが1つ。モンゴルフィエ兄弟がヴェルサイユ宮殿で気球のデモンストレーション飛行をした時、気球には羊1頭、おんどり1羽、そして「カナル」を1羽乗せていた。関係する画像などを見るとおそらく茶色っぽい、いわゆる日本語では「カモ」と呼ばれているものらしいのだが、一体日本語でこの話を紹介する文章を書く時、「カモ」と訳していいものだろうか。同乗した羊もおんどりもおそらく家畜であったろうから、やはり「アヒル」とするべきだろうか。
と、航空宇宙分野の問題でなく、言語や翻訳業界の専門家の方ならすぐに答えを示唆いただける話でしたね。この点勘弁していただけたら幸いである。右の航空機の写真は、ノルウェーのLCCであるNorwegian Air Shuttleがモンゴルフィエ兄弟に敬意を表し同社の人物デコ機シリーズにモンゴルフィエ兄弟を加え、それが飛行しているもの。画像はCCライセンスとなっている。
Credit Photo 上:© Roger-Viollet
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:Y190316-02
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。