航空・科学技術
posted: 2019/03/16
update: 2019/03/24
時は18世紀後半。日本では江戸時代のまっただ中、田沼意次政権の終盤。ちょうど天明の大飢饉が起こった頃である。その後数年で意次は失脚し、松平定信の寛政の改革が始まる。一方フランスはブルボン王朝ルイ16世の時代。フランス革命前夜の頃であり、王様のルイ16世もまだギロチンにかけられていない。
そんな時代、ジョゼフとエティエンヌのモンゴルフィエ兄弟は熱気球を開発し、ヴェルサイユ宮殿で王様のルイ16世、そして王妃のマリー・アントワネットの目の前で気球の飛行実証を成功させた。
ジョゼフ(兄)とエティエンヌ(弟)のモンゴルフィエ兄弟は、代々続く老舗の製紙業を営むモンゴルフィエ家の息子たちであった。といっても大勢いた子供のうちの2人である。そのモンゴルフィエ兄弟の気球のヒントとなったのは、こんなことだったと伝えられている。寸劇風にすれば・・・
ある日暖炉でシャツを乾かしていたジョゼフは、シャツが上方に持ち上げられる形でふわっと膨んだのを見る。
ジョゼフ:お、大発見だぞ!エティエンヌ、兄ちゃん大発見したぞ!
エティエンヌ:何だい、兄さん。
ジョゼフ:この暖炉から出る気体には何か上昇する成分が入っているんじゃないか?
エティエンヌ:そうなの? でももっと突っ込んで研究しなきゃダメだと思うよ。
ジョゼフ:そうだな、お前が言うことももっともだ。じゃあ、一緒にやろうぜ。
エティエンヌ:え、僕も?
ジョゼフ:いいじゃぁないか、兄弟だろ〜。商売にも役に立つかもしれないぜ。一緒にやってくれよぉ〜。
結局、シャツを膨らませていたのは温められて上昇する空気で、物理化学的に新しい成分の入った気体ではなかったが、当初2人はそれがこれまでに発見されていなかった気体だと捉え「モンゴルフィエのガス」と命名した。ともあれこの出来事が熱気球のはじめの一歩だったのである。ちなみに、フランス語の通称では熱気球のことを「モンゴルフィエ」と言っている。
続きは第2部へ・・・・・
Credit Photo 上:©️© Roger-Viollet、下:ソースMedarus, Le temps des ballons, par le Musée de l'Air (MAE). Ed. de la Martinière, Paris 1994, 140p
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:Y190316-01
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。